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With HANDSOMUSE vol. 12

女性のエンパワーメントを支えて

21.11.05

石井リナRina Ishi

起業家。
1990年生まれ。ウェブ広告やSNSのコンサルタントを経て、2018年にBLAST Inc.を設立。エンパワーメントメディア「BLAST(ブラスト)」と、女性の声を反映したフェムテックブランド「Nagi (ナギ)」を立ち上げ、多くの女性たちの共感を得る。2019年に日本を代表するビジョンや才能を持った30歳未満の30人を表彰する「Forbes 30 Under 30」インフルエンサー部門を受賞。プライベートでは夫婦別姓を選択するため、法律婚から事実婚に移行。

今回は女性のエンパワーをサポートする会社、BLAST Inc.を設立した経緯や現在の運営についてお話ししたいと思います。大学卒業後の進路を決めるにあたり、これから先の人生、働く時間が長いのでより楽しく働きたいなと思い、積極的に就職活動を行いました。説明会を受けたのは100社くらいでしょうか。好き嫌いせずに銀行から不動産、商社など幅広い業界でお話を伺いました。自分で納得したいというのが積極的に活動した理由でした。ほかに楽しそうな仕事があるのに知らずにキャリアを選びたくないなと。その過程で成長市場で働きたいと考えるようになったこと、また私自身もSNSで情報収集することが多くなったと実感していたので、ITやインターネットに関わる業界で働きたいという思いが強くなり、デジタルマーケティングに携わる業界を選びました。

IT系の広告代理店に入社し、SNSのコミュニケーションが上手な海外メディアや企業などをフォローして、どのようにユーザーとコミュニケーションしているかなど、その潮流を追っていました。ちょうど欧米ではダイバーシティやフェミニズムというワードが盛んに使われていた頃で、2017年を象徴するワードとして“フェミニズム”が選ばれるタイミングでした。ただ私は日本で生まれ育ったので、疑うこともなく日本を先進国だと思い込んでいましたが、日本はジェンダーギャップ指数が世界の後ろから数えた方が早い。その事実を知り、衝撃を受けました。私のように現状を知らない女の子たちが多くいるんじゃないか、ならば何かできないかと、まずは知ることが重要だと考えてメディアを立ち上げようと思い、その結果起業することになりました。

BLAST Inc.の立ち上げは最初は一人。当初はインスタグラムを中心に、いろいろな問題に対しての解決策を提示していました。今、皆さんに多く支持をいただいている吸水ショーツブランド「Nagi」の準備に入ったのは設立から1年くらい経った頃です。もともとBLAST Inc.のミッションは日本の女性をエンパワーすること。まだポジティブになっていない事柄に向き合いたいと思っていましたし、課題を解決し、気づきを提示したいということからスタートしているので、メディアでもプロダクトでもそこは共通していると考えていました。

「Nagi」は女性の体についての悩みを解決しようと、150人の女性からのアンケートをもとに考えていきました。日本の女性たちは、膣に入れるタイプの既存の生理用品には抵抗があるとわかったので、受け入れやすいもの、まだ日本にはないものと企画を詰めていきました。当時同じようなブランドはほぼなかったことも幸いし、短期間で浸透したのだと思います。

とはいえ、ものづくりは初めてだったので、大変なことだらけ。どこまでの厚さならよいのか、そして生活に馴染むのか、あとは吸水力がどこまで保てるかなど、クリアしなくてはならないことが多くありました。協力してくれる会社は技術はもちろん、同じようなスピード感を持って開発してくれるところを重点的に探し、何十回という単位で試作を重ねました。今年3月には製品をアップデートしたのですが、吸水力が当初の約2倍にもなり、特許も出願中です。

パッケージなどクリエイティブも、女性が無理なく自然に手にとってもらえることを考えています。日本の生理用品は、パッケージにもピンクやハートマークなどラブリーなデザインが多く、個人的には違和感があります。デザインにも多様性があるべきだと思っており、女性たちが自然に選択できるデザインにしたいと思い、「Nagi」にも反映しています。

「Nagi」をリリースして、ありがたいことに実売も含めてかなり反響をいただき、皆さんにとって課題のあることだったんだなと、与える影響も感じています。「快適で紙ナプキンに戻れない」「トイレに行きにくい販売職の救世主」「子育て中で、お風呂上がりもナプキンをつける手間を省けてさっと履けていい。1分も惜しいので助かります」といった声のように、幅広いライフスタイルの女性をサポートできていると知り、とても嬉しく思っています。

また生理について男女問わずオープンに会話ができるきっかけにもなっているようで、ジェンダーギャップの解決に一石を投じられていることも進歩だと思っています。日本では、決定権を持つポジションに女性が少ないがゆえ、男性主体の社会になっており、その影響はいたるところにでています。日本の場合、実際ジャンダーギャップを問題視する風潮にあっても、課題の解決までは時間がかかります。また、構造的差別の中にいるにもかかわらず、当事者意識のない女性たちもいます。まずは日本のジェンダーギャップの現状を知ることが重要。知らなければ意識や方法を変えるのは難しいですから。知ることで変わることができると信じていますし、私たちは事業やサービスを通して女性をエンパワーすることでそのきっかけが作れたらと思っています。

BLAST Inc.をつくった当初はできる範囲でと思っていましたが、組織も大きくなり、経営者としての責任もますます感じるようになりました。また事業成長のスピードも早く、若い女性たちだけでもビジネスができることを誇らしく思います。男性の起業家や経営者と同様に、事業をスケールアップさせ、海外進出したいという野望もあります。もっともっと仲間を増やし、よりよい未来を目指したいと思っています。今は、小さい船に乗った数人で荒波の中を航海しているようですが、好奇心は旺盛に、自分に対して制限をかけないよう今の状況も楽しんでいます。

 

Rina Ishi’s Column