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With HANDSOMUSE vol. 10

指先に宿る、繊細な美学

21.10.01

東條 汀留Teru Tojyo

マニキュアリスト。
1988年に“爪の時代”を意味するネイルサロン「LONGLEAGE(ロングルアージュ)」を東京・西麻布にオープン。現在は広尾にて営業。サザビーリーグと協業する「TAACOBA(タアコバ)」ブランドを、銀座店ほか全国6店舗で展開。著書に『大人の上品美爪塾』(講談社)がある。

コロナ禍で生活様式が変わったことにより、家で過ごす時間も長くなったので、セルフケアをされる方が多くなりました。またご縁があり、顧客で私の理論をよくご理解くださっている田中みな実さんがMCを務めるアマゾンプライムビデオの番組「ビューティ ザ バイブル シーズン1」 に参加させていただいた影響もあるのだと思いますが、20代後半の若いお客様が増えています。私が考える“健康的で美しい爪”にとっては嬉しい傾向ですが、残念ながらネイルの基本的なことがまだまだ浸透しないのが実情です。

まず爪の形。「ロングルアージュ」ではラウンドスクエアのフォルムを提唱しています。手の形をスマートに見せようとフラットなまま先だけを三角形に尖らせている方がいますが、かえって手が太って見えます。ラウンドスクエアに整えていくことで爪自体が立体感のある弧を描くように育ち、割れにくく、指も長く見えるようになります。もしも爪にトラブルがあっても、多くの場合、半年から1年くらいケアを続けることで、奥行きのある美しく健康な爪を手に入れることは可能です。
自画自賛ですが、私自身の爪を「きれいだわ」とお褒めいただくことが多かったので、ある時、爪のカーブを実際測ってみたのです。そして美しく見える爪のデータを研究したら、爪の高さ1に対し、爪の幅1.6という黄金比に則っていました。やはり自然界の法則は永遠です。
それから、爪が弱いという声も多いです。“緑の黒髪”と呼ばれるような艶のある黒々とした髪色を見なくなったことでもわかるように、食生活の変化で欧米化し、皮膚も爪も薄くなっています。
生まれつきの体質で変わらないと思い込んでいらしゃる方も多いのですが、お手入れで改善できることがほとんどです。爪と髪は同じで、甘皮のお手入れを続ければ甘皮の伸びが遅くなります。

とはいえ、このように「爪を健康にしましょう!」と唱えても、遠方でサロンに通えない方々はどんな風にケアしたらいいかもわからないでしょうから、ネイル クレンジング スクラブや3つの効果を兼ね備えたベースコートなど、セルフネイルケアの商品も発売したところ、皆さんにとても喜んでいただいています。
私がお伝えしているネイルは、流行でもモードでもなんでもない。ネイルが身だしなみの一環ととらえて欲しいです。流行はマニキュアの色でいくらでも変えられます。

アメリカでも上流階級の方は自爪でおしゃれを楽しむ方が多いです。なぜなら健康がいちばんだから。ラグジュアリーを知る人々の価値観は世界共通です。非日常のシーンでのドレスアップにしても、日本はまだまだそういう文化は幼いのかもしれません。
ただ日本には儚いもの、移ろいやすいものに美しさを感じる、世界に誇れる特有の美学があります。そういう繊細さを忘れてはいけないと思っています。マニキュアは塗りたてもきれいだけど、3、4日経って少し薄くなってきた状態はそれはそれで美しい。

上質、洗練、日常を掲げるベルシオラのジュエリーも、非日常の着飾るものではなく、毎日を輝かせるもの。イメージヴィジュアルでもコラボレーションさせていただいていますが、日本の繊細な美意識を感じさせる軽やかなデザインは、健康的な自爪の手元と組み合わせることでとても上品な美しさを醸し出します。
幸いにも上質を知る大人のお客様に恵まれ、コミュニケーションを通して素晴らしい財産を頂きました。一過性のブームにはなりたくないですし、大人になったら通いたいサロンとして文化的な存在になるよう、35年貫いてきた理論をこれからも変えることなく続けていきたいと思います。

 

Teru Tojyo’s Column