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With HANDSOMUSE vol. 13

もっと自分のために
おしゃれを楽しんで欲しい
― スタイリスト 望月律子さん 前編

23.07.05

望月律子Ritsuko Mochizuki

1975年生まれ。ファッションスタイリストとして20年以上のキャリアを持つ。現在は大人の女性誌『Precious』(小学館)、『eclat』(集英社)、ウェブマガジン『mi-mollet』(講談社)のほか、ブランド広告、トークイベント出演でも活躍。2021年にはファッションレンタルサロン「Allons-y(アロンズィ)」(allonsy.jp)を立ち上げる。著書に『望月律子のSTYLING THEORY』(ワニブックス)。
Instagram @ritsukomochizuki

今回ご登場いただいたHAMDSOMUSEは、ベーシックな定番アイテムでこなれ感を出したスタイルを得意とするスタイリストの望月律子さん。雑誌やイベントなどを通じ、わかりやすい言葉とともに伝えてきたスタイリング術を、「よりパーソナルにそれぞれに寄り添いたい」との思いでファッションレンタルサロン「Allons-y(アロンズィ)」を2022年にスタート。前編ではどんなふうにスタイリストとしてのキャリアを築いてきたのか、ファッションへの思いとともに伺いました。

ファッションは小さい頃から大好きでした。といっても洋服を作るというより“色合わせ”にすごく興味があったんですよね。子どもなのにカーキとベージュを合わせて着るような、かなり渋好みで(笑)。その部分は今も変わらないのですが、母親からは「渋いわね……」とダメ出しされていました。もっと可愛らしい服を着て欲しかったんでしょうね。とにかく洋服に色合わせを取り入れるのがとても好きだったので、それがずっと続いていて現在に至ります。

10代で進路を考えていたときは、正直ファッション系かスポーツ系の仕事か迷いました。ファッションとは対極にありますが、実はスポーツも大好きなのです。運動神経が良かったので、学生時代からいろいろなスポーツをやっていたこともあって。スポーツインストラクターやパーソナルトレーナーになるか、もしくはファッションの仕事なのか。どうしようかと迷っていたら「こんな学校があるよ」と友達が紹介してくれて、まず一年制のスタイリスト学校に入りました。スタイリストという仕事は資格が必要なわけではないですが、基本的なことを学べて楽しそうだなと思ったのがきっかけです。

望月さんがスタイリングを手掛けた雑誌『Precious』のページより。

東京に出てきて、最初はスタイリストのアシスタント派遣会社に登録しました。一般には知られていないと思いますが、毎日いろいろなスタイリストの方から事務所に要請があり、アシスタントとして出向き、現場をサポートする仕事です。雑誌、広告、TVなど生の現場で、仕事のノウハウを身につけました。自分でいうのもですが(笑)どちらかといえば器用なほうなので仕事の大まかな流れは半年くらいでキャッチし、徐々に現場もこなせるようになって。アシスタントといえど、実は忙しくなるとそれなりのお給料もいただけるんです。それでこのままだとその状況に甘えてしまい、スタイリストのプロではなく、スタイリストアシスタントのプロになってしまうかも……と危惧するようになりました。

ファッションレンタルサロン「Allons-y(アロンズィ)」にて。

そんななか、ある日、大御所スタイリストの大沼こずえさんの現場に入ることがあったんです。とても意気投合し、そこから専属のアシスタントとして3年ほど師事しました。彼女はタレントからハイブランドまでオールマイティで、そのバランス感覚も含め今でもリスペクトしています。ただ私は自分の好き嫌いが仕事に反映してしまうので、年齢とともに携わるメディアも変化してきました。同じ雑誌をずっと担当するのは無理なタイプなんですが、『Oggi』(小学館)は10年も携わりました。誌面は当時仕事服が中心でしたが、基本コンサバが好きなのでベーシックにトレンドを入れていくというスタイルが合っていたのだと思います。仕事の8割が『Oggi』ということもあるくらい、私の30代を捧げました(笑)。すごく働ける世代でしたし、雑誌も勢いがあったので。

『Oggi』の仕事の一環で、アパレルブランドとのイベントに度々参加させていただきました。大阪や京都など各地のショップでお客様の予約制スタイリングアドバイスをするのですが、それがとても新鮮で自分自身も楽しかったんです。雑誌で「読者が選ぶ好きなコーディネートBEST10」に自分のスタイリングが選ばれ、評価をいただけるのは嬉しかったのですが、どんな年齢の人がどんな感覚での反応なのか読者の顔が見えない。でもイベントではリアルに知りたいこと、似合うものを直接伝えられることがなんとも楽しくて。おすすめの服に着替えてフィッティングルームから出てくる皆さんが、私が着方のお直しに入るとパッと顔色が明るくなるんですよ。鏡に映る自分がいつもと少し違うように感じるんでしょうね。このフェイス トゥ フェイスで味わえる感覚が好きだなと。

サロンを立ち上げるにあたり、カードからハンガーラックまで自身のこだわりを込めたという。

このファッションレンタルサロン「Allons-y(アロンズィ)」をスタートしたのは、そのときの経験が大きいです。私のテイストの基本がコンサバなので、お客様の安心感もあるように思います。雑誌の提案も、自分のファッションも一貫しているのですが、唐突に「今季のトレンドはこれです、だから着なくちゃ」みたいなのが得意じゃない。トレンドだからで着るというよりは、もう少し服が持つニュアンスを大事にしたいと思っています。そのあたりが一般のお客様とニアなところであり、喜んでいただけるところでもあるのかなと。

ドレス1点のレンタルから、シューズやバッグまでトータルなコーディネート提案も可能。アイテムごとのレンタル価格に望月さんのアドバイス料、クリーニング代なども含まれている。

今はSNSでいろんなことを発信できますが、その情報は受け手が読み取った感覚でしかないんです。よく通販サイトでも「想定したものと違いました」というコメントを見かけますよね。モデルやインフルエンサーが着て可愛いものを、果たして自分が着て可愛いのか、やっぱりもう少し俯瞰で自分を見ることが必要。それができていない人が多いとも感じます。「もっと自分のためのおしゃれを楽しんで」ということを伝えられたらと思っています。

 

Ritsuko Mochizuki’s Column