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With HANDSOMUSE vol. 14

望まないマダム感とのボーダーラインは
ジュエリーの付け方に
― スタイリスト 望月律子さん 後編

23.08.09

望月律子Ritsuko Mochizuki

1975年生まれ。ファッションスタイリストとして20年以上のキャリアを持つ。現在は大人の女性誌『Precious』(小学館)、『eclat』(集英社)、ウェブマガジン『mi-mollet』(講談社)のほか、ブランド広告、トークイベント出演でも活躍。2021年にはファッションレンタルサロン「Allons-y(アロンズィ)」(allonsy.jp)を立ち上げる。著書に『望月律子のSTYLING THEORY』(ワニブックス)。
Instagram @ritsukomochizuki

今回ご登場いただいたHAMDSOMUSEは、ベーシックな定番アイテムでこなれ感を出したスタイルを得意とするスタイリストの望月律子さん。40代に入ってからは新たな雑誌にも挑戦し、現在は『Precious』(小学館)などを中心に活躍中。また2022年にはファッションレンタルサロン「Allons-y(アロンズィ)」もスタート。後編ではサロンでのエピソード、そして「ベルシオラ」のジュエリーを主役にしたスタイリングもご提案いただきました。

私はファッションを感覚的というより、言葉にして理論的に伝えるほうが好きなんです。誰しも挑戦したいけれど、どうもうまくできないことってあると思うんです。私にとって、それは料理。「仕上げに塩ひとつまみ」とよく料理の先生などがおっしゃると思うんですが、不得手な私にとっては「え、それってどれくらい?」 みたいな(笑)。私自身の苦手ジャンルをファッションに置き換えてみると、興味はあるけどおしゃれにできないという人の感覚もわかるんですよ。だからちゃんと理解できる言葉で伝えて、脳にインプットしてもらえたら、私がいなくてもご自身で楽しんでもらえるんじゃないかと考えて、ファッションレンタルサロン「Allons-y(アロンズィ)」を立ち上げました。

着こなしは毎日のこと。常に私がいるわけではないので、サロンで築いた一対一のご縁をうまく使って欲しいと思ってます。最初にものすごくヒヤリングするんです。好きなもの、行動体系を含め、結構聞き出しますね。「望月さんに組んでもらったから、おしゃれに見えるんだわ」とおっしゃっていただくのですが、おしゃれに見えるには理由があります。私が言葉で伝えるポイントを、ご自身がしっかりと咀嚼できたかどうかが重要。自分が素敵と思えれば、男女問わず心が豊かになると思うんです。ファッションは環境破壊など解決できていない社会問題もありますが、お客様がワクワクと高揚するようすを目にすると、日常で味わえる体験としてすばらしいものだなと改めて感じます。

一着のレンタル料(3,300円~)には望月さんのアドバイス料、クリーニング代などが含まれている。送付対応(レンタル料20,000円以上から片道無料)しているので、セッション後手ぶらで帰ることもできる。手持ちのジャケットにプラスするためのレンタルも可能。時間は1セッション、1時間半ほど。

さらにレンタルした服で出かけた先で「今日、素敵だね」とでも言われたりすれば、それはもう内側から出る美容液のような効果ですよね。年齢を重ねると好きなものが狭まり、どうしても似たようなものになりがち。もちろん好きなものは大事にして欲しいのですが、そのベースにどのくらいのさじ加減で新しいエッセンスを入れていくか、考えられるのがファッションのいいところ。こういうスタイルだからこのジュエリーを添えて楽しもうとか、今日はこんな気分で出かけようという伸びしろがあります。

先日はオペラを観に行かれる方に、実際の観劇やパーティの装いをアレンジしました。推しのアーティストの来日公演とのことで、生で歌声を聴くことができる貴重な機会。複数回行かれるということでしたので、すべて違う着こなしをご提案しました。仕事、会食、セミナーでの登壇、卒入学、七五三などお客様からのリクエストはいろいろですが、例えば結婚式なら会場やイメージを伺ってアレンジします。お子さんがいらっしゃる方であれば、普段はシルキーなブラウスは汚れが気になるので難しいなど現実的な制限もありますが、予定がある日は思い切っておしゃれを楽しむことができます。

実は無難に黒のワンピースを借りる想定で来られたお客様も、4、5パターン試着いただくと結果黒のワンピースを選ぶ方はほとんどいないんですよ。それも所有しなくていい、レンタルだからこそできる冒険かもしれません。買うとなるとどうやって着回して行こうか、元を取れるかなどマイナス要因を考えてしまう。だけどレンタルなら購入で二の足を踏んでしまう服にもチャレンジできるので、8~9割の方がチャレンジを選ぶんです。

例えば大きめのドットのブラウス。サロンで数パターン試着していただくと「オールブラックの着こなしに1点入るだけで、こんなに華やかになるんですね!」と発見があるわけですよね。日常的ではないけれど視点や視野が広がる。ドットのブラウスの懐の深さに気づくんです。それから私自身が好きということもありますがジレは人気。雑誌ではよく紹介するアイテムですが、実は一般にはワードローブにある人が少ない。「どうやって着たらいいかわからない」「インナーのショルダーバランスが難しい」とハードルを高く感じている人が多く、いい機会だからと選ばれます。そしてよかったから買ってみようという方も。サロンでの経験を新しいアイテム購入のきっかけにしていただいたり、自分では手にしないおしゃれの提案ができることも、スタイリストである私がこのサロンを運営する意味があります。


愛すべきジュエリーとの付き合い方

私自身のスタイリングは、服がシンプルなので毎日服、靴バッグを決めたら、それをどう盛り上げていくかジュエリーは仕上げに。ネックレスは掛けた状態で、それ以外は引き出しに並べて一挙に見えるように収納していて、朝、ジュエリーワードローブ全体を見渡してどう味付けようか考えます。ただ家に帰ったら手を洗う前にジュエリーは全部取りますね。よく家にいるときも身につけているという人がいますが、私は解放派です(笑)。

初めて手にした本物のジュエリーは、NYの有名ブランドの小さなダイヤモンドのプラチナネックレスでした。27、28歳の頃、スタイリストとして独立して仕事が回り始めた記念にFOR MEとして。時計をあまりつけないので、長く愛用できるジュエリーを買うことが多いです。素敵だなと思った上質なものにそれなりに投資したほうが大切にする気がしますし、そういう意味でもジュエリーは何よりパワーになりますよね。しばらく眠らせていたジュエリーを久しぶりにつけるといいなと思えて、急にレギュラーに返り咲いたり。ジュエリーはいいものを選ぶと古臭くなることはないですよね。その輝きを今のコーディネートにどう合わせていくか、不変的なのでそういう喜びもありますよね。金も高騰していることもあり、昔購入したリングが倍額になっていたりするので、それなりに投資はしていますが、いい買い物をしてきたなとも思っています。

「ベルシオラ」のネックレスも長年愛用しています。テーパーバゲットカットのダイヤモンドは、どこかクラシックな感じもありつつ辛口モダン。光に当たると独特な輝きを放つのもいい感じなんです。ほかに合わせるジュエリーですごく印象が変わるので、それも使いやすい理由かもしれません。婚約指輪がバゲットカットのダイヤモンドなので、その相性もいいですね。自分らしいシャープさのある表現にも合うんですよね。ラウンドのダイヤモンドは少しエレガントすぎるのかも。いくつか「ベルシオラ」のジュエリーに、このサロン「アロンズィ」で扱っている服を合わせたコーディネートをご紹介しますね。

【Style1】

先ほどもお話しした人気のジレを使ったスタイル。普通の白T+デニムにジレを合わせるだけで、大人っぽい雰囲気に。クルーネックがスポーティなので、Y字のロングネックレスで縦長の視覚効果をつくるとすっきりみえます。しかもアジャスター付きなので短くしてチョーカー風にもアレンジできるそうです。

【Style2】

渋好みな私はネイビーシャツも出動率高めです。ジュエリーはすっきりと手元のみに。ダイヤモンドとブルーサファイアの《ライン》コレクションのブレスレットをレイヤード。《コンフォート》コレクションのリングはなんと内側を細くした二重構造! むくんだときにもすっきり見えるように指との間に空間があり、しっかりとした指の私にも嬉しい配慮です。

【Style3】

肌が透ける繊細なレースのトップスには、ゴールドベースにテーパーバゲットカットのダイヤモンドを一石だけ配したディスク型ピアスを、あえて一つだけ合わせました。こちらも身につける女性に寄り添う《コンフォート》コレクションで、どんな耳の向き、ピアスホール位置でもなじむデザイン。こういったエレガントな服にジュエリーを盛り過ぎるのは要注意です。

年齢を重ねてエレガントすぎると、望まないマダム感が出てきてしまうことがあります。そのボーダーラインはジュエリーにあるようにも思います。私は今50歳を目前ですが、カジュアルシックを基本に50歳を前に何を変えるべきか、ジュエリーのつけ方も考えていきたいです。ファッションはトータルバランスでもあるので、服、ジュエリー以外にもヘアやメイクも重要。だから今、髪に少しヤンチャなインナーカラーを入れたのも、服とのバランスを考えてなんです。自分のベーシックを貫いていきたいですし、上質なジュエリーをつける時にマダムになりすぎないことを意識すると、髪を遊んでいいのかなと思って。フェミニンな服にライダースを合わせるミックスマッチな感覚があるんですよね。髪型一つでバランスが変わります。胸元にインナーカラーがあると、一粒ダイヤモンドのネックレスをつけても遅れてきたエレガンスにはならない気がしています。

コロナ禍、自分の世界観のなかで自分ができることを模索していました。このサロンの構想はあったものの、途中なかなか前に進まずめげそうになるときもありましたが、いろいろ情報を収集して、自分が現役で活動できている時にサロンをきちんと作りたいと。このいい物件に出合えたのもラッキーでした。実は大家さん親子も顧客なんですよ。悩み多き30~40代はもちろん、パワフルな70代まで、ブランドは顧客ターゲットを縛るけど、ここでは壁がないんです。まったく違う業種の話、プライベートの話など、私自身刺激になるお話も伺えます。レンタルした服は基本送付で返却していただくのですが、お手紙を同封してくださる方が多いんです。「周りに褒められて幸せでした。これだけ幸せに感じられる服をまた次の方に着てもらえるのが嬉しいです」などフィードバックをいただき、ファッションの楽しさ、ワクワクを共有できていると思うと本当に涙が出そうになります。私が選んだ服を着て褒められ、それが何よりもモチベーションにつながっているんだなぁと。お貸ししてまたそれが戻ってきて次の方へ幸せのバトンを渡すって、服が喜んでる感じがするんです。

 

Ritsuko Mochizuki’s Column